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開催レポート

本日のニュー・アーティストランチタイムコンサートは、東京藝術大学および大学院に在籍する3名の若手ピアニスト、今井理子さん、東海林茉奈さん、京増修史さんが、ステージに立ちました。
感染症対策のために、パウゼのそれまでの定員よりも少ない席数での開催となりましたが、クラシック音楽のこれからを担おうとする方々の登場を前に、演奏を楽しみに待つ客席の皆様のご様子が、とても印象的でした。



 最初にご登場の今井理子さんは、現在大学1年生。今日の出演者の中でも最若手になりますが、ステージに現れた時の優しい笑顔と、いざ楽器に向かった時の真剣な眼差しには、アーティストとしての風格を感じました。プログラムはホ短調のエチュード、舟歌、第3番ソナタの全楽章と、オール・ショパン・プログラムでしたが、安定の技術と細やかな表現で、最後まで惹き込まれる演奏を披露くださいました。
特にメインのプログラムとなったショパンの《ピアノ・ソナタ》第3番は、ショパンの作品の中でも堅固な形式観と優美な旋律が際立つ大作ですが、今井さんの演奏は、全4楽章が途中に様々な起伏を伴う大きなストーリーへとまとめ上げられており、華やかな終楽章のフィナーレに到達したときの感動は、大きなものでした。


 
 次に登場された東海林茉奈さんは、1音ずつに強い意思を感じさせるタッチと、1フレーズごとに細やかな表現を感じさせる演奏で、客席をご自身の音楽世界に集中させる求心力を持っていらっしゃいました。
プログラムもバッハのフランス組曲にショパンのマズルカおよび舟歌に、最後がスクリャービンのソナタ第4番と多彩で、東海林さんの音色の引き出しの多さを感じさせるものでした。
特にショパンの《マズルカ》作品56での過度な表出を抑えた演奏と、《舟歌》嬰ヘ長調での煌びやかな演奏との対照は印象的でした。
さらに、スクリャービンの《ピアノ・ソナタ》第4番では、スクリャービンの楽曲に含まれる独特なハーモニーを、存分に味わうことが出来ました。



 最後に登場された京増修史さんは、ピアノ音楽の魅力を大いに引き出すような、柔らかく美しい音色をお持ちでした。
冒頭のバッハ《パルティータ》第5番では、真珠の転がるような音色と滑らかな指運びで気品漂う演奏を聴かせてくださいました。
その後続いたのは、音楽的な構造美が際立つベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ》第27番ですが、そちらでは楽曲に込められた性格や表情を丁寧に汲み取っていらっしゃいました。
最後の《英雄ポロネーズ》はショパンの作品の中でも技巧的な場面が多々ありますが、京増さんは細部のパッセージや音型1つずつまで、大変美しく聴かせてくださり、ポロネーズの優美な世界を見事に見せてくださいました。

 残念ながら終演後のご挨拶や面会はありませんでしたが、お客様は皆、お三方の演奏から心に美しいものを持ち帰ったご様子でした。
今後ともパウゼから、魅力あふれる音楽が紡ぎだされ続けることを願います。(A.T.)

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