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宮下朋樹&礒 絵里子 デュオリサイタル 開催レポート

 本日は、桐朋学園大学を卒業後海外でも研鑽を積まれた、ヴァイオリニスト磯絵里子さんとピアニスト宮下朋樹さんのデュオコンサートでした。プログラムはなんと、全てベートーヴェンの作品。それも、作曲年代の違う作品がずらりと並び、有名な「ハイリゲンシュタットの遺書」からのベートーヴェンの歩みが見られるような内容となっていました。

 最初は、ベートーヴェンが「遺書」を書いた年に書かれたとされるヴァイオリン・ソナタ第8番。芸術家としての生き方に苦悩していたという伝記的エピソードとは裏腹に、朗らかな響きに満ちたこの曲を、磯さんの安定感のあるヴァイオリンの音色と、堅固な宮下さんのピアノが見事にまとめ上げていました。技巧的な第1楽章と第3楽章はもちろんのこと、落ち着いた雰囲気の第2楽章もとても素敵でした。次は宮下さんのソロで、ベートーヴェンの中期ピアノ・ソナタ代表作の1つである第21番(通称「ワルトシュタイン」)の演奏でした。ソナタという枠を持ちながらも、ベートーヴェンの創作上の工夫に溢れたこのソナタですが、宮下さんは楽曲の「勘所」をよく抑え、とても説得力のある演奏をしていらっしゃいました。宮下さんの鋭いセンスが光る音楽に、客席からは感嘆の声も聞こえていました。

 後半の最初は、ベートーヴェンにしては珍しいたった3分ほどの小品《ロンド》でした。この曲はとても馴染みのあるメロディーを持っていますが、このメロディーが広まったのはヴァイオリニストでもあったクライスラーが、ベートーヴェンのこの曲を主題に演奏会レパートリーを書いたからです。磯さん自身も、今回初めてクライスラーの「元ネタ」となるこの曲を知ることになったとのこと。この知られざる名曲を大変可愛らしく演奏されていました。そして最後のプログラムとなったのは、ベートーヴェンの生涯最後のヴァイオリン・ソナタとなる第10番。お2人の解説によれば「虚飾を取り去った」魅力があるというこの作品は、シンプルな分聴き手に訴えかけるのがとても難しくなっています。しかしながら、磯さんの簡潔な音楽創りと宮下さんの過度な表現を抑えた伴奏とが一体となって、大変美しい演奏となり、演奏終了後はしばらく拍手が止みませんでした。

アンコールは、やはりベートーヴェンの《6つのドイツ舞曲》と、話題となったクライスラーの《ベートーヴェンの主題によるロンディーノ》でした。お2人の曲目解説も充実しており、ベートーヴェンの魅力を再認したコンサートでした。(A. T.)

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