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セルゲイ・ドレンスキー教授 追悼コンサート Vol.1 開催レポート

 本日はセルゲイ・ドレンスキー教授(1931-2020)の追悼コンサートが行われました。ドレンスキー教授はチャイコフスキー記念国立モスクワ音楽院ピアノ科教授であり、「ロシアン・ピアノスクールin東京」の音楽監督(2003-17)および音楽顧問(2018-2020)として、若き音楽家達の才能の芽を最大限に引き出してきました。平日昼間の開催であるにも拘わらず、パウゼにはドレンスキー教授の死を惜しむと共に教授の育ててこられたピアニスト達の活躍を願う方々が集まり、教授の大きなお写真が飾られた会場はいつもとは違う緊張感に満ちていました。

  
 
 コンサートはまず、ドレンスキー教授が教鞭を取られていたモスクワ音楽院から、2名の教授による映像での演奏で幕開きとなりました。ピアノ科学科長でもあるアンドレイ・ピサレフ教授はショパンの《夜想曲》第2番を、パーヴェル・ネルセシヤン教授はグリンカの《夜想曲(別れ)》を演奏されました。お2人のピアノに込めたドレンスキー先生への真摯な思いは、画面越しでも伝わってきました。ピサレフ先生の澄んだショパンの音色、ネルセシヤン先生の哀愁漂うグリンカの音色は、静かでありながら熱さを宿していました。

 

 そしてパウゼではロシアン・ピアノスクールに縁の深いピアニストの阿見真依子さんと、ロシア音楽にとりわけ造詣の深い長瀬賢弘さんによる、追悼演奏が行われました。阿見真依子さんはショパンの技巧と感性の詰まった《バラード》第1番に始まり、チャイコフスキー《四季》より〈1月〉、ラヴェル《水の戯れ》、シューベルト《さすらい人幻想曲》と、多くのピアニストが磨きをかけてきた演目の数々を演奏されました。阿見さんの高い技術と適格な音楽創りには、ドレンスキー教授の教えを受けた演奏家の方々が、また次の世代へと美しい音楽を広げてゆく様を見ました。
長瀬さんはロシアのピアノ音楽には欠かせない作曲家プロコフィエフで全ての演目をまとめ、《サルカスム》、《4つの小品》、《3つのオレンジへの恋》の〈行進曲〉、《ピアノ・ソナタ》第9番を演奏されました。特に循環主題の扱いが興味深い《ピアノ・ソナタ》第9番は、プロコフィエフが完成させた最後のピアノ・ソナタであり、この追悼コンサートを締めくくるのに最適なプログラムに感じました。長瀬さんは高い音楽性と長らく培ってきたプロコフィエフ作品へのリズム/ハーモニー感覚で、各楽曲を美しく纏めていらっしゃいました。

 

 今日出演されたお2人が、演奏の後にドレンスキー教授のお写真へ深く礼を捧げていた姿が、大変印象深いものでした。ドレンスキー教授が日本で伝えてくださった音楽への想いは、これからを担う演奏家の胸にしっかりと刻まれていることと思います。ドレンスキー教授のご冥福をお祈りするとともに、教授の育て上げた演奏家の皆様の晴れやかな活躍を願います。(A.T.)

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