カワイコンサート No.2358
イ・ヒョク ピアノリサイタル
2025年7月11日(金)開場18:30 開演19:00
会場:電気文化会館 ザ・コンサートホール
7月11日、名古屋・伏見のザ・コンサートホールにてイ・ヒョクさんのピアノ・リサイタルが開催されました。今回の演目は、すべてショパンの名曲で構成された贅沢なオール・ショパン・プログラムでした。
イ・ヒョクさんは爽やかな笑顔で登場されました。静寂の中、間を十分に取って弾き始められた「マズルカ Op.41」。冒頭の和音から美しい音色が広がり、イ・ヒョクさんの音楽の世界に聴衆は引き込まれました。続く「バラード 第3番 変イ長調 Op.47」では、曲の細部まで繊細な表情付けがされており、演奏が進むたびに新鮮な驚きがありました。「即興曲 第2番 嬰ヘ長調 Op.36」は荘厳な響きから終盤のきらびやかなパッセージまで、コントロールの行き届いた多彩な音色が魅力的でした。
前半の最後に演奏された「ポロネーズ 第7番 変イ長調 Op.61 幻想ポロネーズ」はショパン晩年の傑作です。イ・ヒョクさんはショパンの内面に寄り添いながら、曲を慈しむように演奏されており、会場に深い感動を与えていました。
後半のプログラムは「ポロネーズ 第5番 嬰ヘ短調 Op.44」から始まりました。先ほどの幻想ポロネーズとはまた異なった表情で、力強さの感じられる華麗な演奏でした。続いて「24の前奏曲 Op.28」第7番から12番が演奏されました。それぞれの調性が持つキャラクターが見事に弾き分けられていました。中でも第11番 ロ長調 の明るく気品溢れる響きが印象的でした。
後半のメインに置かれた「ピアノ・ソナタ 第2番 変ロ短調 Op.35 葬送」は演奏機会の多い名曲ですが、数多の名演の中でも特に完成度の高い演奏と感じられました。特に第1楽章の構築性、第4楽章の巧みなタッチとペダリングによる響きの変化は特筆すべきものがありました。最後の「スケルツォ 第2番 変ロ短調 Op.31」はどこまでも軽やかに、鍵盤を自在に駆け巡りながら怒涛のフィナーレを迎えました。会場はスタンディングオベーションもみられる程の熱狂ぶりでした。
アンコールでは晩年の美しいノクターンの後、凄まじいテクニックでエチュード「木枯らし」を弾いてくださいました。
様々なショパンの名曲を名手の弾くSK-EXの豊潤な音色で味わえたことは大きな喜びとなりました。イ・ヒョクさんは今年開催される第19回ショパン国際ピアノ・コンクールへの参加を表明されています。そこでの活躍を確信させるような、大盛況の一夜となりました。
中部支店 ピアノ研修担当 村中美保
