2025年 7月9日 (水) 開場18時00分 開演18時30分
会場:兵庫県立芸術文化センター 神戸女学院ホール
7月9日(水)、西宮市の兵庫県立芸術文化センター・神戸女学院ホールにてイ・ヒョクさんをお迎えして
カワイコンサートが開催されました。
舞台を客席が取り囲み、木の温もりが感じられるアリーナ形式のホール内は、開場と同時に満席となり、3部構成でのオール・ショパン・プログラムへの期待が膨らみます。
とてもチャーミングな笑顔で爽やかに舞台へ登場されたイ・ヒョクさん。
即興曲2番の演奏から始まります。とても集中され音を紡ぎ出されるお姿に、こちらも一気にイ・ヒョクさんの世界に誘われていきます。壮大でかつ華やかに展開されていく中、その時々の空気感や響きを大切にされながら、まるで即興的に音遊びを楽しんでいるかの様な演奏に一曲目から惹き込まれ、2曲目のバラード3番では、優雅で洗練された表現力と色彩豊かな音色に包まれ、「24の前奏曲」より7番から12番では、6曲を通して明確な起承転結を表した一つの見事な物語性を感じました。
続いてスケルツォ2番では情熱的と繊細優美な楽想のコントラストが巧みなテクニックによって繰り広げられ、瞬く間に1部の締めくくりを迎えます。
2部は、オーケストラのようなダイナミックなポロネーズ5番から始まり、続くマズルカ0p.41では、流麗で端正なリズムと民族色豊かな郷愁で優美な旋律が際立ち、こちらも4曲を通して、1部での前奏曲とは全く違う物語の世界が繰り広げられていきます。
ピアノソナタ2番では、1楽章の荘重な序奏から疾走感あふれる緊迫した主部でゾクゾクし、3楽章の葬送行進曲では、特別な想いがより感じられ、中間部の天国的な美しさの響きには感動のあまり心が震えました。
3部では、晩年の作品である幻想ポロネーズとピアノソナタ3番のプログラム。
ショパンの作品に真摯に向き合われているからこその卓越された解釈に、終始、魅了され、3時間近いリサイタルでしたが、会場内は感動に満ち溢れ、スタンディングオベーションの中、終演を迎えました。
数日が経っても、どれも深く心に残ったプログラムばかりで、チェスの名手でもいらっしゃるからでしょうか?全ての作品において絶妙なバランスで感情とテクニックの巧みなコントロールや駆け引きが終始されていた印象を受け、丹精込めて磨き上げられた演奏は、まるで美術工芸品のようでした。
ショパンの魅力を改めて実感し、幸福感に満たされ、忘れられない一夜となりました。
秋のショパンコンクールが待ち遠しいです。