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2019年 ピティナ・ピアノコンペティション特級入賞者コンサート 開催レポート

    

日本の代表的なコンクールの一つ、ピティナ・ピアノコンペティション2019年特級入賞者のお二人がパウゼにもやってきました。

まずは、銅賞を受賞された秋山紗穂さんのご登場です。1曲目は、二次予選でも弾かれたJ.S.バッハ=ジロティの《プレリュード》を聞かせてくださいました。時代やジャンルを超えて様々な編曲がなされる魅力を持つ《平均律クラヴィーア曲集》、リストの弟子ジロティによる編曲版は、左手の分散和音と右手の16分音符によるロ短調の調性感が全体を覆います。その中で丁寧に紡がれる長い呼吸の旋律はそこに置かれるだけで美しく響き、秋山さんの演奏による調和の妙が際立ちました。リスト《伝説》より第2曲では、声部や音型による巧妙な音色の弾き分けの生む多層的な場面描写によって、客席が同じ情景を目前に共有しているかのような感覚を覚えました。
対照的に、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」では、印象的な動機に突き動かされて推進する「純器楽」的な楽曲の性質を存分に汲み取られていました。

続いて、亀井聖矢さんは、特級グランプリ、さらに日本音楽コンクールと史上初の同時制覇の偉業を成し遂げ、表彰式では河合賞も受賞されました。
まずは平均律クラヴィーア曲集から、以前のコンペティションで弾かれた第2巻のロ長調を選ばれました。全体構造と場面ごとのバランスを見据え、必要なものだけを厳選した音楽創りには、バッハ自身の創作過程に通じるものが感じられました。続いては、二次予選で弾かれたラヴェル≪夜のガスパール≫を、打鍵の深さやスピードの絶妙なコントロールで音楽の構成美を聞かせてくださいました。研究心とパフォーマンス性を兼ね備えた亀井さんの演奏は、お客様の期待に十分に応えていらっしゃいました。
コンクール入賞のステップを経てますます自信や向上心を増したお二人の演奏には、ピアノを志す子どもたちや学生の方に留まらず、多くの方々が希望を与えられたに違いありません。(M.S)

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