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カワイコンサート2022 イ・ヒョク ピアノリサイタル(仙台公演)開催レポート

令和4年10月13日(木)仙台シルバーセンターにて、カワイコンサート イ・ヒョク氏のピアノリサイタルが行われました。
会場は満席。ショパンコンクールのファイナリストの演奏を、誰もが心待ちにしていました。
 
前半は、オールショパンのプログラム。
1曲目は、ノクターン第17番ロ長調Op.62-1。冒頭のアルペジオの序奏。伸びやかで、上品さに溢れていて、その美しさに一瞬で引き込まれました。転調前の悲しみ、孤独感を絹のように美しいベールに包み、中間部の深みに。そして、極上のトリルの連続を聴かせて下さいました。最高の前菜のお料理を味わったような1曲目でした。
 
2曲目は、ピアノソナタ第2番変ロ短調「葬送」Op.35。
1楽章は、躍動感とリズミックな主題の提示。芯の強さを窺わせる表現力でした。2楽章は、非常にエネルギッシュで、且つ瞑想的な歌心で魅了させられました。3楽章は重厚で深刻なテーマと天国との対比に、幸福な一瞬を与えられたようです。4楽章は、ユニゾンの音が1粒1粒際立っていて、不気味さの中に、優しさも垣間見えるものでした。
曲全体を通してタッチの多彩さに驚き、それが可能なイ・ヒョク氏だから創れる、立体的な和声感と、音空間には、感動すら覚えました。
 
3曲目は、アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズOp.22。
イ・ヒョク氏の魅力が満載の1曲でした。独奏なのに、どこからか管弦楽が聴こえるような、華やかで明るい雰囲気に会場が包まれました。
 
後半1曲目は、プロコフィエフ4つのエチュードOp.2。
4曲を通じて、トッカータ的な超絶なテクニックを鮮やかにアピールしつつ、前衛的な響き、繊細な表現を見事な集中力で演奏されました。
 
2曲目は、ムソルグスキーの展覧会の絵。プロムナードは、各々が緩急自在で次の絵画への期待を膨らませてくれるものでした。そして10枚の絵は、ユーモラス、典雅、恐怖、重厚さ等、ピアノというキャンバスに数えきれないほどの色彩を描き出して下さいました。SK-EXの楽器の素晴らしさが一際輝いた1曲でした。
 
アンコール1曲目は、ショパンのノクターンOp.48-1。ハ短調の悲痛な歩み、祈り、孤独感を歌い上げ、再現部では、コントロールされたエネルギーの中に、魂の叫びが切々と心に響きました。
2曲目は、一転軽やかで愛らしささえ感じる、クープラン作曲ハープシコードとチェンバロの為の小品、ティックトックショク又はマイヨタン№6で幕を閉じました。
 
イ・ヒョク氏は、演奏すること、音楽を心から楽しんでいるのが伝わりました。それは、音楽の原点であり、観客に伝わるためにはどれだけの知られざる努力をしているのかと思うと、頭が下がります。音楽というものを改めて考えさせられた、良い演奏会となりました。
 
仙台北事務所 講師 澤田美紀

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