ミニピアノから新しい楽しみが増えて欲しい

トイピアノに惹かれたのは、ピアニストのマーガレット・レンタン（Margaret Leng Tan）が出したトイピアノだけのCDを聴いてからです。彼女はアメリカ現代音楽の最先端といってもいいピアニスト。私は学生時代からすごく憧れていたのですが、現代音楽の世界に深く入り込むうちにどうしても彼女に学びたくなり、昨年ACCから助成をいただいて、ニューヨークまでレッスンを受けに行ってきました。もちろん、トイピアノも一緒に。もともとクラシックから始まった私のピアノ歴ですが、思春期に日本の伝統音楽を知って以来、一気に色々な音楽への興味が広がりました。

カワイのミニピアノは、外国製に比べて音がとても可愛らしい！キラキラと繊細な音色がします。表現力も高くて、ピアノのように歌わせることもできますし、遠くまで通る音も出せます。小さいながらきちんとグランドピアノのフォルムを持っているところもいいですね。雰囲気もあるし、作っているメーカーさんの想いも伝わってくるように思います。だから海外での評価はすごく高かったですよ、これはもうトイ（おもちゃ）じゃないって。

今年の春に「YouTubeシンフォニーオーケストラ」にゲスト出演した際も、世界中から集まったオーケストラメンバーが、みんな興味を持ってくれました。 「君の楽器は何？」「Oh！これ！！ベリーキュート！！！」みたいな（笑）。 ミニピアノとミニチュアな私とをセットですぐに覚えてくれて、おかげさまでちょっと人気者でしたね。

 でも、実は結構移動が大変なんですよ（笑）。ハンディに見えるけど、そんなにハンディじゃない（笑）。 ミニピアノ専用のバッグが欲しいですね、できればピアノの形をしていて、背負うことができるリュックサックタイプで。鍵盤の絵がついていればベストです。

 「YouTube」の反響もあって、ミニピアノを使った何か面白いイベントができないかな、と仲間たちとアイディアをひねっています。100台のミニピアノを使うプランなどもありますので、そのときはぜひカワイさんにも協力していただきたいですね（笑）。ミニピアノの持っているいろいろな可能性を試しながら、一人のピアニストとして、この現代社会の中でもっともっと音楽を身近に楽しんでいただけるような活動を、展開していきたいと思っています。

YouTubeコンサートの後、ヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで優勝した辻井伸行さんがピアノを始めるきっかけとしてカワイミニピアノが大きな話題になりましたが、この盛り上がりで「トイピアノ」と申し上げたときに、ピンと来てくださる方が増えた気がします(笑)。ミニピアノの存在を知っていただく機会が増えたのは嬉しいですね。ミニピアノから、生活に新しい楽しみが増える…。そんなささやかさが魅力の一つだと思っています。音の美しさは、子どもたちの感性を豊かにする気がします。辻井さんの、あのキラキラした魅力的な音色も、もしかしたらミニピアノの影響？！かもしれませんね（笑）。

■＜須藤英子 Eiko Sudo＞プロフィール

都立芸術高校ピアノ科を経て、東京芸術大学楽理科、大学院応用音楽科修了。大学在学中より現代音楽に興味を持ち、同年代作曲家の作品初演を多く行う。現代音楽に関連する美学・民族学等についても広く研究、大学院以後は、マネジメントやアウトリーチ活動についても学んだ。04年、ピアノ独奏にて、第9回JILA音楽コンクール（国際芸術連盟主催）現代音楽特別賞受賞。第6回現代音楽演奏コンクール「競楽」（日本現代音楽協会・朝日新聞社主催）では、ピアノソロとして初の優勝を果たすと共に、「第14回朝日現代音楽賞」を受賞。08年春、オルレアン国際ピアノコンクール（フランス）にて、作曲家・深見麻悠子氏への委嘱・初演作品が、日本人として初めてAndre Chevillion-Yvonne Bonnaud作曲賞を受賞。夏、野村国際文化財団奨学生として、ボストン・ニューイングランド音楽院現代音楽セミナーSICPP に参加。秋、Asian Cultural Council奨学生として、ニューヨークに滞在。 現在、国内外での現代音楽の演奏を中心に、多彩な活動を展開。06年8月より（社）全日本ピアノ指導者協会HPにて開始した音源付連載「ピアノ曲MADE IN JAPAN」では、演奏・執筆両面から日本人作曲家によるピアノ作品の紹介に努めている。和洋女子大学、および洗足学園高校音楽科非常勤講師。これまでに近・現代ピアノ音楽を、松永加也子、青柳いづみこ、野平一郎、高橋アキ、StephanDrury、Margaret Leng Tan各氏に師事。

※このコンテンツは2009年7月の素材を元に構成しています