ピアニスト・北村明日人さん
シンプルな機能美と快適な座り心地
ピアニスト・北村明日人さんが語る「TY-1」の実力
2025年5月に発売を開始したピアノ用スツール「TY-1」。当初は30代~40代の女性をターゲットに開発されましたが、嬉しいことに男性からの支持も高く、注目を集めています。記念すべき第1号購入者となったのは、ピアニストの北村明日人さん。
日々の練習を支える相棒として、TY-1の魅力や使用感について詳しくお話を伺いました。

ピアノ専用スツール「TY-1」:オンラインサイトはこちらから
Contents
北村さんプロフィール
北村明日人(きたむら・あすと)
神戸市出身。ピアニスト。第46回ピティナ・ピアノコンペティション特級グランプリ、第17回東京音楽コンクールピアノ部門第2位など、多数のコンクールで入賞。チューリッヒ芸術大学、東京藝術大学大学院修了。東京フィルハーモニー交響楽団など主要オーケストラと共演。次世代の音楽家育成にも取り組む。東京藝術大学非常勤講師。
SNSの投稿を見て「これだ!」と直感
―北村さんには販売を開始してすぐにTY-1をご購入いただいたのですが、そもそもどんなきっかけでこのスツールTY-1のことを知ったのですか?
たまたまインスタグラムかXで発売開始の情報を見かけたんです。ちょうどその頃、自宅用のグランドピアノを購入したばかりで、新しいピアノ椅子を探していたタイミングだったんですよ。だからTY-1を見たときに「これだ!」と感じて、すぐに申し込みました。
ピアニストにとって、ピアノ椅子はどんな存在か
―演奏家の方にとって、ピアノ椅子とはどのような存在なのでしょうか。
コンクールや演奏会などの本番では、ピアノ本体については納得がいくまで選び抜きますが、椅子については特にこだわりがなく、その場にあるもので最善を尽くせればいいという感じです。
ただし、普段の練習となると勝手が違います。長時間座ったまま練習を続けるので、椅子の座り心地の良し悪しが練習の質に直結するんですよ。

以前のスツールで気になっていたこと
―これまで使われていたピアノ椅子は、どのような点が気になっていましたか。
3時間ほど練習を続けていると、太ももの付け根が痛くなってきます。その理由は、クッション部分が硬く、足の付け根にずっと力がかかり続けるからです。僕は長いときだと1日に8時間くらい練習する日もあるので、ずっと座り続けているのはかなり苦痛でした。
そして、もう一つ気になっていたのが「雑音」です。高さ調整のときに鳴るギコギコという音や、演奏中の重心移動で生じるきしみ音が気になって。特に演奏会などの前で作品を深く掘り下げている時期には、練習中にこうした雑音に意識を持っていかれるのがストレスでした。
シンプルでコンパクトなデザインに惹かれて
―スツール「TY-1」を選ばれた決め手は何でしたか?
第一にデザインがシンプルで、余計なものがないところに惹かれました。高さ調整機能もないのですぐに使えるし、木製で部屋の雰囲気になじみやすい。それに、ピアノの下にしまい込めるコンパクトなサイズ感も気に入りました。
―SNSで見ただけで、実物を確認せずに購入されたわけですが、不安はありませんでしたか?
万が一ピアノ演奏に向かなかったとしても、このTY-1なら普段使いの椅子としても使えるだろうし、何かしら使い道があるだろうと思えたので、あまり不安はなかったです。それに、カワイの製品であることの信頼感も大きかったですね。
―スツールTY-1は、ピアノ椅子に最適な高さの調査・検討を重ね、500mmに設定されています。高さが固定されていて、調整できない点については支障がありませんでしたか?
500mmという高さを見た時に、「自分に合いそうだな」と思いました。実際に使ってみて、ちょうどぴったりな高さだったのでとても満足しています。

―色はmocha(モカ)を選ばれましたが、その理由を教えてください。
実は僕、色にはあまり興味がなくて(笑)。だから、ピアノに合わせて色を選ぶというよりも、部屋全体の雰囲気を優先して選んだんです。ピアノを除くと比較的色のない部屋なので、床の薄茶色やベージュ系の色調に合わせました。
8時間座っても疲れない快適性
―実際に使ってみて、どのような変化がありましたか?
第一に、何時間ピアノを弾いても疲れにくくなりましたね。太ももが当たるスツールの角の部分までクッションがあるので、以前のような痛みが完全に解消されました。長時間練習する日でも、お尻や太ももが痛くならない。この快適さは本当に画期的です。
それと、背筋が自然と伸びます。普通の椅子だと、疲れてくるとつい姿勢が崩れてしまいますが、TY-1は座面が細い分、後ろに重心が偏ることがなく、前傾姿勢を保ちやすいんですよ。演奏中は足の付け根に力がかかりますが、そこにもクッションがあるので負担が分散されるんです。長時間の練習でも良い姿勢を無理なく保てるので助かります。

そして、雑音がしないことも、演奏の質を大きく変えました。高さ調整機能がないので調整音が出ることもなく、演奏中に重心を移動しても音が出ない。置くだけで使えるシンプルな構造だからこそ実現できた静けさです。おかげで演奏に集中したい時期でも、椅子の音に気を取られることがなくなりました。雑音によるストレスが完全になくなったのは、想像以上に快適でしたね。
さらに、軽さも大きなメリットです。片手で持ち運べるので、レッスンの時に位置を移動するのもまったく苦になりません。それに、生徒さんには高さ調整機能付きのピアノ椅子を使ってもらい、僕はこのスツールに座るんですが、2脚並べて使ってもまったくかさばらない。この軽快さとコンパクトさが、日常的に使いやすい理由の一つです。

ピアノ専用スツールという枠を超えた使い方
―「TY-1」はピアノ演奏だけでなく様々なシーンで自由に使っていただきたいと考えて開発された製品ですが、北村さんは実際どのように使われていますか?
僕は演奏時だけでなく食事の時にもこのスツールを使っています。ピアノから食卓にさっと持ち運んで、ごく自然にスツールに座って食事をしています。クッション性が良いので、食事中も快適なんですよ。開発の方の『自由に使って欲しい』という想いを意識したわけではありませんが(笑)、自然とそうなりました。
―レッスンに来る生徒さんたちはTY-1についてどんな反応を示されましたか?
生徒さんたちはこれがピアノ専用のスツールだと気づいていないようですね(笑)。
多分、普通の椅子だと思っているんでしょう。それだけ空間に自然になじんでいるということかもしれませんね。
さらなる進化への期待
―もしTY-1を改善してほしい点があるとすれば、どのようなことでしょうか。
本当に満足して使っていて、木製なので経年変化も楽しみですし、長く大切に愛用していきたいと思います。
音楽を愛する人を増やしたい
―北村さんの現在の活動について教えてください。
平日は大学の仕事があって、夕方以降は基本的にレッスン、終了後から夜中の1時頃まで自分の練習時間に充てています。生徒さんたちは小学生から芸大生、大人の方まで幅広いですね。ワンレッスン制なので、必要な時に来ていただくスタイルです。
毎日こんな状況なので、時間が足りないといつも思っているんですが、僕はピアノを弾くのが大好きなので、演奏は必ず毎日します。生徒が弾いているのを見ているとどうしても弾きたくなってしまい、模範演奏と称して自分で弾いたりしています(笑)。
―今後の演奏活動への抱負をお聞かせください。
僕は今、ピティナ主催でベートーヴェンのソナタ全曲録音に取り組んでいますが、これを2回、3回と続けることで、ベートーヴェンへの理解をもっと深めていきたいと思っています。そして、クラウディオ・アラウというピアニストのように、80歳を超えてもベートーヴェンのソナタが弾けるピアニストになりたいですね。
また、レッスンを通じて、音楽の楽しさを伝えることも大切にしています。音楽を好きな人が増えて、コンサートに足を運んでもらえるきっかけを作れたら嬉しいです。これからも応援よろしくお願いします。
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