
アニメソングの枠を超え、叙情的でエレクトロニックなサウンドで幅広い支持を集めるバンド・fhána。そのリーダーであり、メインコンポーザーを務める佐藤純一さんは、ピアノを正式に習ったことのない独学の音楽家です。「青空のラプソディ」をはじめ数々のヒット曲を生み出し、楽曲提供やプロデュースでも活躍する佐藤さんにとって、鍵盤楽器は自分のクリエイティビティを最も自由に表現できる「相棒」。
ライブのメインキーボードとしてカワイのMP11SEを愛用する佐藤さんに、音楽の原点、理想のピアノの音、そしてMP11SEの魅力について語っていただきました。
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漫画家志望の少年が音楽に出会うまで
子どもの頃は漫画家になりたくて、ずっと絵を描いていました。中学生ぐらいまでは本気で漫画家かイラストレーターになりたいと思っていたんです。実際に、美術大学も卒業しています。
転機は、中学3年生の頃でした。坂本龍一さんやYMOの音楽、それから渋谷系と呼ばれるフリッパーズ・ギターや小沢健二さんの音楽に出会って、すごい衝撃を受けたんですよね。自分が聴いてきたヒットソングとはまったく別軸の世界観で、こういうことをやりたいと思って、急激に音楽の方へ軸足が変わっていきました。
そもそも楽器は自分の身近にある存在でした。父がフォーク好きだったので、家にはアコースティックギターが転がっていたし、小学3、4年生の時に買ってもらった玩具のキーボードで、ドラゴンクエストやファイナルファンタジーの曲を耳コピして遊んでいたんです。そのうち好き勝手に弾くようになって、左手でここを押さえながら右手をこうすると、こういう雰囲気になるんだなと、コード理論のようなものを感覚的に覚えていきました。

ピアノは、「なくてはならない相棒」
私はピアノ教室に通ったこともなければ、音楽大学で学んだこともありません。ずっと遊びの延長で、独学でやってきました。だからこそ、自分のクリエイティビティを一番自由に表現できるのがピアノなんです。
頭の中にある音を形にするのもピアノだし、手癖から思いがけないフレーズが生まれることもある。頭と手が相互にインスパイアし合いながら曲が生まれてくる。ピアノは自分にとって、なくてはならない相棒ですね。

理想の音色を求めて出会ったカワイのピアノ
私はfhánaでも楽曲提供でも、女性ボーカルの曲を手がけることが多いんですね。そうなると、ピアノに求める音色が自然と定まってきます。ピアノの高音域がキラキラと目立ちすぎると、女性ボーカルの帯域とぶつかってしまう。だから理想は、中低域に強みがあって、太くて、柔らかくて、丸みのある音。歌が上にあるとき、その下をしっかり支えてくれる音色です。
数あるピアノの中で、河合の音色はまさにその理想そのものです。しかも、E Qなどの後処理で帯域を調整する必要がない。後処理とはそのピアノの1番の強みを抑えるトレードオフでもありますから、カワイの音は、その強みをそのまま生かした状態で、歌との理想的なバランスが取れるんです。それが私にとって最大の魅力です。

MP11SEという存在価値
カワイのMP11SEは、私がライブで使うメインの電子ピアノです。MP11SEとの出会いは楽器店でした。まず目を引いたのは、グランドピアノのような高級感のあるビジュアルです。実際に弾いてみたら音色も素晴らしく、何よりも鍵盤のタッチがとても弾きやすかった。それが決め手になりました。
また、私自身は独学でしたが幼少期に妹がピアノ教室に通っており、実家にはカワイのアップライトピアノがあったので親しみもありました。
私はライブで演奏するアーティストでもあるので、ステージ映えはとても大事なんです。これまで各社のステージピアノを使ってきましたが、電子ピアノなのにグランドピアノのような佇まいとオーラを放っている楽器は、MP11SEしかないと思います。

バランスの良さに魅力を感じて

fhánaにはポップな曲もあれば、激しくエモーショナルな曲もあります。立って演奏したり、強くバーンと弾いたり、時には肘でガーンとノイズを鳴らすこともある。そういう激しい弾き方をしても、うるさくならない。でも、ちゃんとエモーショナルな勢いは伝わってくる。優しく情感を込めて弾いたときの音色も言うまでもなく素晴らしいですし、そのバランスがとてもいいんです。
それから、ぜひお伝えしたいのは、左手の低音域と右手の高音域のパワーバランスが整っていること。広く手を開いて、右手で高い音を強く弾きながら左手で低いルートをガーンと同時に鳴らしても、どちらの音も埋もれずに全部きれいに聴こえてくる。一般的には左手の低音域が大きくなりすぎて右手の高域が埋もれてしまいがちなんですが、そうならずにバランスよく全部の音が聴こえている。これがMP11SEの好きなところですね。
ピアノの楽しみ方は一つじゃない
私はおそらくカワイのピアノユーザーの中ではちょっと異端で、ピアノを正式に習ったことがありません。でも、だからこそ辞めずに楽しく続けてこられたという面もあると思っています。
クラシックピアノを楽譜通りに弾くという教育は素晴らしいけれど、それだけだと途中で離れてしまう人も多いのではないでしょうか。ピアノにはコードバッキングやジャズピアノなど、いろいろなスタイルがあります。一つの流儀だけしか知らないのはもったいない。いろいろな楽しみ方に触れて、自分に合ったスタイルを見つけてほしい。楽しんで弾けることが、何より大切だと思います。

独学で鍵盤と向き合い、自分だけの音楽を切り拓いてきた佐藤さん。その創作の傍らにはいつも、自由に弾けるピアノという相棒がありました。カワイのMP11SEとともに、fhánaの音楽はこれからも進化を続けていきます。
<プロフィール>
佐藤純一 Junichi Sato
新潟県出身。バンド・fhánaのリーダー、メインコンポーザー(作編曲家)。2013年にfhánaを結成し、TVアニメ『小林さんちのメイドラゴン』OP「青空のラプソディ」をはじめ数々のアニメ主題歌を手がける。同曲のMVはYouTubeで6000万回再生を突破。平成アニソン大賞作曲賞、令和アニソン大賞編曲賞を受賞。fhánaでの活動に加え、作曲家・サウンドプロデューサーとして多数のアーティストへの楽曲提供を行う。自身が代表を務めるマネジメント事務所NEW WORLD LINEを設立し、シンガー・nonocのプロデュースも手がけている。







