【創立98周年記念】河合健太郎社長インタビュー

2025.08.09894 views

創立98周年を迎えるにあたり、4代目社長・河合健太郎が語るこれまでとこれから。
新たな理念・ブランドメッセージに込めた想い、そして100周年へのビジョンとは。

2025年8月9日、カワイは創立98周年を迎えました。これを機に、2024年に社長に就任した河合健太郎が、社内外に向けたメッセージを語ります。
新たに制定された「KAWAI Philosophy」やグローバルブランドメッセージ「Instrumental to Life」が生まれた背景、そして100周年に向けた展望とは。
カワイのこれからを形づくるビジョンを、ぜひご覧ください。

KentaroKawai

 

――― 社長に就任されてから約1年と少しが経ちましたが、現在の心境をお聞かせいただけますか。

この1年約3ヶ月は、非常にあっという間に時が過ぎたと実感しています。
カワイという歴史ある企業を率いる、責任の重さを日々感じながら、昨年1年間は海外大体10箇所、国内11支店を回って、本当にいろんな人と対話を重ねてきました。その中で、現地の人や、関係者と色々話をする中で、カワイが期待されてることや、これからやらなければいけないことがとても明確になりました。

また、この1年は、これまでずっと私が考えてきた、組織の改定、例えば日本国内の営業組織と海外営業の組織の統合をしたり、「カワイ10年の計」、「中長期経営計画」を策定したり、また今後さらに伸長していく電子ピアノ市場を見据えて電子ピアノを増産するためのインドネシアの新工場の設立、そして「カワイフィロソフィー」の制定など、数多くのことを手がけてきました。

 KAC

 

――― 2025年3月に発表された企業理念体系「KAWAI Philosophy」は社長ご自身が深く関わられたと伺いました。まずはこちらの制定に至った背景をお聞かせいただけますか。

これまで弊社は、約30年前に経営の理念と行動指針を、創業70周年の時に制定しましたが、以前から、我々の企業理念は、「カワイらしさ」がやや薄いような、一般的などの企業にも当てはまるような内容であると感じていました。

また、先ほども申し上げた通り、昨年、国内外数多くの場所を訪問して、カワイのスタッフや、音楽関係者と話をする中で、カワイが求められていることや、これからカワイが100周年、さらにその次に向かうべき場所、すべきことが非常に明確になってきました。それを言語化してフィロソフィーという形にしたい、するべきだと感じました。
この思いを、ミッション、ビジョン、バリューズ、クレドという形にし、皆が共感できる分かりやすい言葉にして、それをまとめたものがKAWAI Philosophyとして完成しました。

 

――― ではミッションである「人生を、響かせる。」という言葉にはどのような思いが込められているのでしょうか。この言葉を掲げられた背景や制定されている思いについて詳しくお聞かせいただけますか。

ミッション「人生を、響かせる。」は、これはまずカワイにしかできないことは何だろうかと考えた時に、やはり「我々はただ楽器を作って販売してるだけではなく、カワイの製品を通じて世界中の人々に、その身の回りにカワイがあることで、そこにいろんな喜怒哀楽、感情に寄り添うことができる、その楽器を使用したり、サービスを経験したりした方に、何かしら人生に影響を与えている」と感じました。
そのようなことを、「人生を、響かせる。」という言葉で、ミッションとして掲げました。
またピアノを通じて人々の感情や思いを響かせるだけではなくて、「カワイで働くメンバーも、自分の仕事を通じて1人1人、人生が豊かになる、そうあってほしい」と願いも込められており、お客様とカワイの社員それぞれが、人生が響くように、今回はミッションを、「人生を、響かせる。」としました。

 

――― 「やらまいか精神でまずやってみよう」という言葉は社長が日頃から大切にされているお考えだと感じております。 社長が普段から失敗を恐れずに挑戦してみようと声をかけてくださることにより、私たち社員も知恵と勇気が湧き、新しいことに踏み出す力をいただいております。この姿勢は組織全体に前向きな雰囲気を生み出していると実感しております。

まず、「やらまいか」という言葉ですが、これは浜松の方言で、「やってみよう」とか、「やってやろうじゃないか」という意味です。これは新しいことに積極的に挑戦するという精神を表す言葉として、主に浜松中心で使われています。
これは私がカワイに入社し、社長就任する前からですが、カワイの社員やスタッフは、非常に真面目で一生懸命仕事をしていると感じる一方で、なんと言いますか、失敗を恐れてチャレンジする精神が希薄になっているような気がしていました。なので、完璧でなくても良いので、まずは一歩踏み出してほしいという気持ちがあります。これを社員の皆さんに持っていただきたいと思い、この「やらまいか」という言葉をあえて、このフィロソフィーの中に使いました。
そして、やはりやるからには、もちろんうまくいくことばかりではなくて、失敗することもあると思いますが、その失敗から何を学ぶか、そしてその失敗を通じて次また新たな挑戦をするかが重要です。それだけ挑戦の数が多ければ多いほど、会社も成長するし、その人も成長していけるのではないかと思い、「やらまいか精神でやってみよう」ということを掲げました。

NAMM2025

 

――― この理念をどのように社員に浸透させていきたいと考えていますか。

このフィロソフィーを制定して、それで終わりではなく、そこからがスタートだと感じています。
実際に、トップダウンで言うことよりも、実際の社員の皆さんが共感して、自分のこととして捉えて、そして落とし込まれてこそ初めて生きたフィロソフィーになると考えています。

今後、いろんな場面でこのフィロソフィーに共感できるような、場所やイベントを作っていきたいです。例えばワークショップや、評価制度。加えて、「やらまいか大賞」といったような社内イベント。こういったものを作ることで、このフィロソフィーが生きる仕組みづくりを、進めていきたいと考えています。

 

――― 2025年1月、創業以来初めてとなる鍵盤楽器向けのブランドメッセージ、Instrumental to lifeを全世界に向けて発信されました。この言葉にはどのような背景や思いが込められているのでしょうか。メッセージを作成するに至った経緯や、込められた願いについてお聞かせいただけますでしょうか。

これまで当社では世界一の楽器づくりを目指して、当然お客様に良い楽器を提供するという使命のもと、98年間取り組んできました。しかし、企業として発信が足りていないという反省点もありました。

当社の楽器やサービスがお客様にとってどのような存在であるのか、どのような価値が創造されるのか、また人生にとって欠かせない存在であるということを、明確に言葉として伝えたかったのです。
音楽があるということが、本当に人生を豊かにする。そして喜びも悲しみも挑戦の時も、常に寄り添ってくれる。そんな存在がカワイであるということを、ワールドワイドで「Instrumental to Life」という形で提供して、どの国から見てもカワイの思いが全く同じになるようなメッセージを出したかったということが、今回の背景です。

 

――― このメッセージを通して、社内やお客様にどのような反響がありましたか。

社内では、改めて自分たちの仕事の意義を再認識するきっかけになったと思っています。ただ楽器を作っている、ただ販売しているだけではないと感じてくれた社員、また海外のディーラー、そしてアーティストからも「とても共感できる、いいメッセージである」という声を多く聞きました。
この言葉を掲げることで、世界中のカワイの仲間たちが、本当に同じ方向を向いていくための共通言語になってきているし、もっともっと、なってほしいと思っています。

artist

 

――― 2025年8月で創立98周年。100周年を見据えた今、どのようなビジョンをお持ちですか?

2027年が100年という1つの節目ではありますが、それは通過点の1つだと考えています。

河合楽器は、約100年にわたって創業者・河合小市のピアノづくり、そしてその思いや哲学を、連綿と途切れることなく受け継いできました。そして夢である「世界一のピアノづくり」を実現していきたいと思っています。
しかし「世界一の鍵盤楽器メーカーになる」ということは、なかなかイメージしにくい部分もあると思いますが、例えば著名なコンクールでピアニストから最も選ばれるブランドになることや、また著名なピアニストから「カワイを選べば間違いないだろう」という絶対的な信頼を得るブランドになること、また、電子ピアノにおいても同様で、やはりカワイの電子ピアノは、やはりアコースティックピアノを作っているメーカーならではのタッチ、そして音が魅力だと思いますが、それがプロから趣味で楽しむような方まで、最初に選ばれる最も信頼されるブランドになることだと思っています。

その結果として、私たちは世界でトップシェアを取る。

そして今後大事なのが、この10年間でまず主要市場で鍵盤楽器のシェアを高めることで、当社全体としてより成長させていきたいと考えています。
ピアノ、電子ピアノの品質を向上すること。ブランド認知度をもっともっと上げること。そして、販売チャネルを増強すること。
これらによって高付加価値化とシェアの拡大を実現していきたいと考えています。

 

――― 社長として多忙な日々を送られる中で、「音楽」をどう捉えていらっしゃいますか?音楽がご自身の仕事や考え方に与えている影響についてお聞かせください。

音楽というのは決してこの世からなくなるものではないと思っています。ただ日々生活するだけであれば、音楽がなくても生活は成り立ちますが、やはり人々が生活する上で欠かせない存在であることだと思います。特に最近で言うとコロナ、コロナウイルスであったり、いろんな戦争であったり、必ずそのような時に音楽が寄り添う。音楽の重要性は非常に個人的にも感じています。音楽の本質というのは人と社会をつなげるものだと思っているので、そのような音楽文化の創造に携われているカワイというのは、私自身もそれが喜びになっていますし、社員の皆さんも音楽に携わることが本当に素晴らしいというところを実感していただければと思っています。

01

 

――― 少しお話が変わりますが、社長のご趣味についてもぜひお聞かせいただけると嬉しいのですが、いかがでしょうか?お仕事とはまた違ったリフレッシュの時間などをどのように過ごされているのか、とても興味があります。

皆さんが私の趣味に本当に興味があるかどうかは分かりませんが(笑)。
1つは、キャンプが結構好きで、特に2020年のコロナ禍以降に、まずキャンプギアを買い集めたことからスタートして、実際に、多いときは年10回ぐらい家族と行っていました。
キャンプの何がいいかというと、やはり日常とは違う自然の中で料理をしたり、川遊びをしたりとか、あとは焚火を見ながらハイボールを飲む瞬間が非常にリフレッシュできるなと思っています。なかなか昨年からは忙しくてそんなには行けてはいないのですが、時間があればまた行きたいと思っています。

camp

あとは、ゴルフも趣味でやっていまして、ゴルフっていうのは、やったことがある人は分かると思いますが、全然上達しないんです(笑)。だからこそ、やりがいがあるといいますか。ゴルフも、いわゆるマネジメントの一種なので、仕事に通ずるものが多少はあるかもしれないです。ただ、単純に、体を動かすことは好きなので、ゴルフも趣味の1つですね。

あとは、食べることも好きで、結構ラーメンが好きだったりします。いろんな地方に行ったときに、ご当地のラーメンを食べるのも、結構好きです。

golf

 

――― では最後に、カワイと共に歩んでくださっている皆様へメッセージをお願いいたします。

私たちは次の100年に向かって、音楽文化を提供していく責任があります。カワイが皆様の世の中の日常に寄り添うことで、自分らしさを表現できるようになり、その結果、世界中の日常が温かい音色で彩られると信じて、その価値を世界中に届けていきたいと思っています。
100年企業という名に恥じぬよう、伝統を守りながらも、新しいチャレンジを恐れずに。そして皆様には今後とも温かいご支援をよろしくお願いしたいと思っております。ありがとうございました。

kawai

河合楽器製作所

ピアノ・電子ピアノといえばKAWAI
1927年創業の
鍵盤楽器メーカーです

これまで100年近くにわたり、世界各国にたくさんのピアノ・電子ピアノを届けてきました。
国際コンクールやコンサートなどでは、世界中の多くのピアニストにご愛用頂いております。
「音楽を通じて、感動を共に分かち合いたい」
これは、永きにわたる楽器づくりの歴史から生まれたKAWAIの想いです。

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