ピアノの調律はなぜ必要?知っておきたい調律の知識

2026.08.18108 views

「最近、音が少し濁ってきた気がするけれど、まだ弾けるし、調律が必要かな?」

「しばらく弾いていないピアノでも調律したほうがいいのかな?」

ピアノの調律について、こんな疑問が浮かぶことがありますよね。実は、ピアノの調律は単に正しい音程に合わせるだけではない、もっと奥深い役割を持っています。

ピアノは、木材や羊毛フェルトなどの天然素材が使われている繊細な楽器です。私たちが体調管理に気を使ったりするのと同じように、ピアノにも定期的なメンテナンスが必要なのです。ピアノの調律は、楽器を守るだけでなく、演奏する人の耳や感性を育むことにもつながります。

もっと楽しく、もっと長くピアノと付き合っていくために必要な、調律の知識をまとめました。

なぜ音程がズレるの?ピアノならではの構造

楽器の王様と言われるピアノ。ピアノの屋根を開けて中を覗いてみると、たくさんの弦や部品が並んでいます。

実はピアノは約8,000もの部品で構成された非常に精密な楽器(グランドピアノは約10,000点の部品)です。多くの部品が複雑に連動しているため、わずかな環境の変化や部品のズレでも全体のバランスに影響し、音程だけでなく音質やタッチにも変化が現れます。

そのため、ピアノの性能を維持するには定期的な調律や調整が欠かせません。

1音に3本の弦

ピアノの鍵盤は88鍵なので、弦の本数も88本だと思われがちですが、実際には約230本もの弦が張られています。

1つの鍵盤に割り当てられている弦の本数は、低音域では太い1本、中低音域では2本、中音域から高音域では3本です。特に中高音域では、1つの鍵盤を弾くと3本の弦が同時に同じ音程で響き合い、ピアノ特有の豊かで美しい音色を生み出しています。

しかし、この3本の弦の音程がわずかにずれるだけでも、音が濁ったり、不快なうねりが発生したりしてしまいます。これが、定期的なピアノ調律が必要とされる大きな理由のひとつです。

ピアノには約20トンもの力がかかっている

ピアノの弦には、1本あたり約70~90kgもの強い張力がかかっています。その総張力は、ピアノ1台で約20トンにも達します。

さらに、ピアノは木材やフェルトなどの天然素材を多く使用しているため、季節による湿気や乾燥の影響を受けやすい楽器です。気温や湿度の変化によって弦の張力や木材の状態が変化し、少しずつ音程のズレやタッチの変化が生じます。

また、ピアノは非常に多くの部品が複雑に連動して音を生み出しているため、ごくわずかな変化でも音色や弾き心地に影響が現れます。たとえ毎日同じ場所に置いていても、時間の経過とともに少しずつ状態は変化していくのです。

【MEMO】ご愛用のピアノの音程のズレの点検は、次の動画を参考にしてください。

では、そのまま調律をせずに放置すると、ピアノにはどのような影響が現れるのでしょうか。

調律を放置するとどうなる?

少しの音程のズレだから、まだ我慢できると思って放置してしまうと、大きな損失を招くかもしれません。

《ピアノの寿命を縮めてしまう》
調律師は、音を合わせるだけでなく、内部のフェルトや木部にカビが生えていないか、虫に食べられていないかといった健康診断も一緒に行っています。早期に発見ができれば、大切なピアノをより長持ちさせることにつながります。

《音感が迷子になる》
特に小さなこどもは、脳の働きが柔軟で、多くのことが自然に身につく特長があります。その大切な時期に、ズレた音程で練習を続けると、それが正しい音だと脳が覚えてしまいます。正しい音程の澄んだ音色で練習することは、何よりの音感教育になります。

《結果として費用が高くなってしまう》
長年放置したピアノは、音程が大きく下がっています。これを正しい音程に戻すには、一度の調律では足りず、何度も作業が必要になり、結果として費用が高くなってしまうことがあります。また、カビやサビなどが原因で部品交換や修理が必要になると、さらに高額な費用がかかります。

調律の頻度はどれくらいがベスト?

調律は一年に一回とよく言われますが、実はピアノの置き場所の環境によっても少し変わります。

《基本は年に1〜2回です》
乾燥する冬や湿気の多い夏などに向かう、季節の変わり目に音はズレやすくなります。最低でも年1回、季節の変わり目に合わせて年2回の調律を行うとさらに安心です。

《新しいピアノの場合は年2~3回》
購入後、約5年までのピアノは、弦や内部構造(アクション等)が環境に馴染む過程にあり、音程やタッチが不安定になりやすいため、年2~3回の調律を推奨します。

《大切な行事に合わせて》
発表会やコンクールの前など、大切な行事の本番に合わせて調整を行うことで、演奏者のモチベーションを高めることもできます。

《最近の住宅事情》
床暖房や気密性の高いマンションなどでは、ピアノにとって乾燥しすぎることも。ピアノにとって快適な環境は温度25℃前後、湿度は50%前後です。ピアノの設置環境が気になるなら、調律師に相談しましょう。

調律師が行う3つの基本作業

調律師が行うのは、ピアノを正しい音程に合わせる「調律(ちょうりつ)」作業だけではありません。鍵盤タッチや発音の不良を起こさないようピアノを調整する「整調(せいちょう)」、音量・音色のバランスを整える「整音(せいおん)」などの作業項目も理解したうえで、調律師に的確な作業をお願いしましょう。

調律(ちょうりつ)

88鍵盤、約230本すべての弦の張力を調整し正しい音程に合わせる作業です。

  • 中央のラの音を基準の音程440Hz(440~442Hz)に合わせます。
  • (割振り)1.のラの音を起点として、オクターブの基準になる音を作ります。
  • (ユニゾン/同音)3本の弦を基準と同じ高さの音程に合わせます。
  • (オクターブ)基準の音をオクターブずつ上下に移して、すべての音を正しい音階・音程にします。
  • 4.で作った音それぞれのユニゾンを合わせます。

整調(せいちょう)

鍵盤アクション機構の動きや寸法を揃え、鍵盤タッチや発音の不良を起こさないよう調整することです。鍵盤を押してから打弦に至るまでの部品をチェックし、位置関係の修正や、動きが円滑になるよう作業します。鍵盤を押して音が出ない、鍵盤が重く感じる、トリルやトレモロなどで軽快な動きが出来ないなどの不具合があれば調律師に相談しましょう。

整音(せいおん)

ハンマーの状態を均一にし、音量や音色のバランスを整える作業です。音量、音色が均一に揃えられ、ピアニシモからフォルテシモまで、音楽としての表現力が最大限に発揮できるようになります。音質を改善したい、音のバランスが悪いと感じたら調律師に相談してください。

信頼できる調律師のポイント

大切なピアノを託す調律師選びは、次のポイントを参考にしてみてください。

《音合わせ(調律)以外の作業も大切にしているか》
音程を合わせる調律のほかに、鍵盤のタッチを整える整調、音質の調整をおこなう整音など幅広く対応できる技術力のある調律師なら安心です。ピアノ内外部の掃除などにも気を配り、ピアノ全体を可愛がってくれる人を選びましょう。

《しっかりお話を聞いてくれるカウンセリング能力》
優れた調律師は、作業前に必ずヒアリングを行います。「最近、鍵盤が重く感じる」「夜に練習するから防音について知りたい」など、演奏者の悩みに対して具体的な解決策を提案してくれるかどうかが大切です。ピアノの状態を理解し、今日行う作業内容をわかりやすく説明してくれる調律師なら安心して任せられますね。

《公的な資格や所属団体を確認する》
国家検定ピアノ調律技能検定試験に合格したピアノ調律技能士であるか、一般社団法人日本ピアノ調律師協会に加入しているかなどは、高い技術レベルを測る指標になります。始めはあっても終わりのないのがピアノ調律技術と言われます。技術力の向上に日々努めている調律師が理想です。

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《調律の日を、家族で音を楽しむイベントに》
我が家に調律師が来る日は、ピアノを弾こどもにとって学びのチャンスです。ぜひ、作業の一部を一緒に見守らせてあげてください。調律の日を家族で楽しむ日にしましょう。

《中身を見る経験が、楽器への愛着を生む》
ピアノの外装が開放される調律の日は、その複雑で不思議な内部構造を目にする絶好のチャンスです。230本もの弦や複雑なアクション、そして羊毛でできたハンマーが弦を叩く仕組みを知ることで、ピアノへの愛着がさらに深まるかもしれません。

《調律のビフォーとアフターを体験する》
調律の前と後の音の違いを、こどもと一緒に聴き比べてみましょう。濁りが消え、視界が開けるような音の変化を体験することは、耳のトレーニングになります。調律をすると、倍音(ばいおん)が豊かに響き、美しい音色に生まれ変わります。この美しい響きに触れることで、音の微細なニュアンスを感じ取る感性が育ちます。

《ピアノの健康状態を一緒に聞く》
「音の鳴りがよくなってきたね」「夏場は湿気に注意してね」といった調律師からのアドバイスを共有することで、こどもはピアノへの愛着を深め、より主体的に向き合うようになります。ずっと横で見ている必要はありませんが、最初と最後はコミュニケーションの時間を取るとよいでしょう。

開始時(カウンセリング)
→「この鍵盤の戻りが悪い」「特定の音だけ耳に刺さる」など、気になっていることを正確に伝えます。

作業中
→常時の立ち合いは不要です。静かにしていただくことが調律のサポートになります。

終了時(音の確認)
→調律が終わったら、弾いてみてください。「もう少しこうして欲しい」などの要望があれば、その場で調整するのが一番効率的です。

ピアノ調律に関するよくある質問(FAQ)

Q. ほとんど弾いていないピアノでも、毎年調律は必要ですか?

A. はい、弾かなくても調律は必要です。

ピアノは季節ごとの湿度や温度の変化と、常に掛かっている20トンに及ぶ弦張力の影響を受けています。弾かない期間が長くても、弦は少しずつ伸び、木材は季節ごとに伸縮を繰り返します。定期的に点検することは、カビや虫害、内部パーツの固着を未然に防ぎ、ピアノの寿命を延ばすことにつながります。せっかく手に入れたピアノですから、定期的にメンテナンスをして有意義に活用することを考えましょう。

Q. 5年以上調律を空けてしまいました。追加料金はかかりますか?

A. 年数分の「追加料金」が発生します。

長期間調律をしていないピアノは、音程が大きく下がっています。これを正しい音程(基準周波数:440Hzから442Hz)に戻すには、一度の作業では弦の張力が安定しないので、2〜3回の調律が必要です。修理が必要な場合もありますので、事前に下見や見積をしてもらうことをおすすめします

【MEMO】カワイ調律サービスへの簡単見積りや問い合わせができます。

Q. 電子ピアノのように「調律不要」にならないのはなぜですか?

A. 木材や羊毛フェルトなどの天然素材が使われている、とても繊細な楽器だからです。

電子ピアノは電子回路に記録されたピアノ音をスピーカーから出力する仕組みですので、基本的に音程のズレは生じません。アコースティックピアノは呼吸する天然素材でできていて、季節ごとの温度や湿度変動により音程やタッチの状態が変化します。天然素材だからこそ得られる、アコースティックピアノの豊かな響きを維持するためには必要な投資ですね。

まとめ:ピアノ調律は感性への投資

天然素材でつくられたアコースティックピアノは、演奏者と一緒に成長していく楽器です。

演奏者の思いを理解し、最適な回答を出してくれる調律師との出会いは、ピアノの成長をさらに進めることにつながります。

調律は定期的な出費が必要ですが、演奏者が奏でる一音一音に彩りを与え、練習を豊かな時間に変える喜びを生み出します。調律が終わったその日から、ピアノを演奏する意欲が高まるはずです。もし、「最後に調律したのはいつだったかな?」と思ったら、それはピアノからの「そろそろリフレッシュしたいな」というサインかもしれません。

綺麗に整った音で弾く最初の一音は、心に響くはずです。

河合楽器製作所

ピアノ・電子ピアノといえばKAWAI
1927年創業の
鍵盤楽器メーカーです

これまで100年近くにわたり、世界各国にたくさんのピアノ・電子ピアノを届けてきました。
国際コンクールやコンサートなどでは、世界中の多くのピアニストにご愛用頂いております。
「音楽を通じて、感動を共に分かち合いたい」
これは、永きにわたる楽器づくりの歴史から生まれたKAWAIの想いです。

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