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【インタビュー】録音技師(レコーディング・エンジニア)古賀健一さんにSK-EXの録音について聞きました

2023.08.111,431 views

善岡慧一さんの録音技師(レコーディング・エンジニア)として、日本でのDolby Atmosの第一人者である古賀健一さん。カワイ表参道にいらっしゃった際に録音についてお話を伺いました。

インタビュー動画はこちらからご覧ください!

 古賀健一

 

本日の録音は何ch(チャンネル)使用しましたか?

19ch使いました。

オンマイク(*1)に7回線
(ステレオメイン 2本、低音用 1本、アンビソニックマイク(*3) 1本(4ch))

オフマイク(*2)に12回線
(メイン 6本、ワイド 2本、アンビソニックマイク1本(4ch))

で19ch使いました。そこからアンビソニックマイクは4chから11chに展開するんです。11chというのは、Dolby Atmosの7.0.4(*サブウーファーを使わない)という形式で、サラウンド(平面)用に7ch、天井用に4chの計11chです。ですので、今回の録音したデータは最終的には33ch(オンマイク3本、オフマイク8本、アンビソニックマイク2本(22ch))の音に分けられて、それを適切にミックスで配置していく形になります。

*1 オンマイク:音源に近い位置に置くマイク, 目的の音を明瞭に録る目的で使用される
*2 オフマイク:音源から離れた位置に置くマイク, 主に全体の響きを録る目的で使用される
*3 アンビソニックマイク:アンビソニックス方式で集音できるマイク, アンビソニックスとは立体音響を収録・再生する音響技術のこと
* 代表的なアンビソニックマイクであるSENNHEISER社製のAMBEO VR MIC。カプセルが4方向に向いており、1本で全周360°の音を収音可能。

vr_mic 

 

立体音響への展開はどのようなイメージで音を配置するのですか?

 基本的にはDolby AtmosにしてもDTS:Xにしてもプラネタリウムのような球体の中のような空間を演出するんです。例えるならば、人間の頭でいうと平面的に頭を取り囲む方向に7ch、頭頂部に近い場所に4chの音を配置していく感じです。

 実際に聞こえた感じに近いように仕上げていきますが、最終的にはアーティストの要望に沿った形で仕上げます。客席に近いようなニュアンスにするか、指揮者の位置にするか、弾き手の位置での聞こえ方にするかは本人の要望次第です。

 

立体音響(Dolby Atmos)とピアノの相性は?

シゲルカワイの音を録ってみたかった

 クラシックだと空間をそのままキャプチャーできるので、ホールの鳴りも収音できるし、ピアノの全体の響きが録れると思います。Popsの録音だと弦の響きをメインに録ることが多いのですが、もっと広いボディの鳴りだったり、フルコンサートピアノの拡がり感をちゃんと録ることができるという感じです。
 でも一番は、表参道のカワイホール(コンサートサロン パウゼ)と、ピアノの音が一番融合した良いポイントを録音するのが今回の目的です。楽器の音というのは、部屋の響きも合わさった音じゃないですか? なので、それを活かせるというのが大きいですね。
 クラシックの世界とかミュージカルの世界でもそうですけれども、自分の座る席によっては、物理的に音量が小さいことがあります。でも作品になってしまえば、自分で音量をコントロールできるようになるわけです。そうすると生以上の迫力って実は出せるんですよね。考え方の違いは色々とありますが、そういう意味ではリアルを超えることは可能になってきたと思います。でも結局、バーチャルがすごいとなっても、やっぱりまたコンサートに行きたくなるんですよね。そういった良い循環は作れると思います。
 日本のレコーディングスタジオには置いていないシゲルカワイのフルコンの音を録ってみたかったっていうのがすごくありました。日本人が作ったサウンドっていうのは自分の経験としても絶対に欲しかったので、すごくありがたい機会を頂けたと思っています。

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本物のDolby Atmosを体験するには

 ヘッドホンはあくまで代用で、最低限7.1.4chというスピーカー環境をどうやってリスナーに届けるかっていう時に、偶然昔の手法のバイノーラルを持ってきただけなので、結局バイノーラルの世界というのは擬似体験でしかないわけです。なので本当のスピーカーから出ている音を聴けば、これをヘッドホンで伝えたかったんだなっていうのが分かると思います。
なので、今は体験してもらえる場所を作る必要があると思っていて富山県砺波市(となみ)に1か所作りました。Blu-rayを持ってきたら映画も見れるし、Apple Musicも自分のアカウントを入れれば聴ける環境です。1回スピーカーからの音を体験して貰えば、誰でも違いは分かると思います。そういう場所をなるべく作って、新しいエンターテイメントの形を多くの人に体験して頂きたいです。ただ作品を創ってこれ良いですよで終わるのではなくて、ちゃんと届くところまで、最後のアウトプットまで責任を持ちたいなといつも思っています。


幅広いジャンルでDolby Atmos対応の作品を数々手がけている古賀さん。これからの更なるご活躍を楽しみにしております。

当日録音した音源はこちらから 

 

古賀健一さんプロフィール

 福岡県出身のレコーディング・エンジニア。日本音楽スタジオ協会、日本オーディオ協会の正会員。青葉台スタジオに入社後、フリーランスとして独立。2019年Xylomania Studio LLCを設立。ASIAN KUNG-FU GENERATION、Official髭男dism、ichikoroなどバンドものから、クラッシック、ミュージカル、映画音楽まで幅広いジャンルの作品を手がけている。

https://twitter.com/kogaken1207

https://www.instagram.com/xylomaniastudiollc/

河合楽器製作所

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